1956「舞台の創造」

山口勝弘「舞台の創造」『美術手帖』1956年1月号

「絵画や彫刻や建築が、廿世紀に入ってから驚くべき変貌をとげたことはいうまでもないが、舞台というものはどのように変っただろう。ここで舞台というのは、単に装置に限るのではないが、もっぱら造形的な面について云うのである。
普通のひとが、舞台という言葉から受けるイメージは、劇場の正面、観客席から一段たかくなっている場処を指すだろう。ととろで、こういう舞台は、丁度四角な箱の一方の面が開いている場合と同じような、空間をもっている。そして、この箱の奥に、背景幕が下がったり、劇の演じられる場処の装置が置かれ、次つぎとそれらしい姿をした登場人物がでたり入ったりして、現実の場らしい錯覚を起させるような努力がつづけられている。たしかに、絵画や建築が、新しい造型意識の洗練を受けたほどには、舞台という分野は、新しい造型意識に目ざめていないようである。空は空として、海は海として、或いは樹や家もすべて、現実に出来事のあったであろう場処の自然の情景として、舞台の上に再現させるためには、こういう四角い箱のような空間も不適当ではない。
しかし、生活還境は急激に変化しつつある。
人間の思想や意識も時間の経過とともに変化する。舞台で上演されるものは、演劇であろうと、パレエであろうと、古いものは新しい演出を、新しいものはもちろん新しい演出を求められる。ことに、舞台という場によって、新しい実験が可能である。こうして、舞台というものを造型的に、新しい空間 − 時間の場として見なおさなくてはならなくなってきている。」

(後略)