1999 Togen Topia

電脳影絵遊戯一夢遊桃源図一
山口勝弘
1999年9 月17 日[金] -10月16 日[土]

Computerized Shadow Play [Togen Topia]
KATSUHIRO YAMAGUCHI
September 17(Fri.) – October 16 (Sat.), 1999

夢遊桃源図

「夢遊する宇宙風景」

昨年12 月、韓国を訪れた折、友人の李元坤氏が所持していた「安堅夢遊桃源図」の本を手にとった私は、数瞬のうちにこの絵の只ならぬ逸気と緩急のリズムに捕われてしまった。その絵を描いた安堅が、15世紀韓国の有名な画家であること。またこの絵は日本の天理図書館の所蔵であることが分かった。
とにかく私を強くひきつけた理由は、桃源郷というこの絵のテーマよりも、人気なき遠近も定かならぬトポスの雰囲気と、生動する岩山たちの展開する宇宙感であった。
この画家の眼が見た光景は、瞬間に網膜の奥底に焼きっき、2度と開かずそのまま閉じられてしまった。そのイメージがここにある。
やがて私は、なんとかしてこの光景の中に侵入してみたいと思った。コンピュータによる解析を行なうと同時に、2次元上の画面に割り込んで2次元半ぐらいの空間の瞭聞から、この世界の内部を経験してみたいと思った。もちろん空間を経験するということは、時間を伴う。
私はこの絵画から得た天来の着想を、もう一度遠慮がちにメタモルフォーズさせて経験したかったのである。と同時に、この宇宙風景を別の視覚的ヴェクトルにより再構成したいという欲望にかられた。こうして幾つかのイメージが、現実世界に現われたのが今回の個展である。
この桃源図に附せられた夢遊という言葉は、この絵の前で漂うわれわれの心にこそふさわしい。コンピュータの中には魔が巣くっていると言う。私はその魔を仲間にして戯れてみたのである。

山口勝弘、1999年9月

32018

“The universal image in dreaming Journey”

In December last year I visited my friend Won-Kon Yi, in South Korea. He showed me a drawing in the book by Ankyon called “Dreaming Journey of Togen Topia”. I immediately felt overwhelmed by the exalted power of the drawing, and by its simple rhythm, which was both technically assured and at ease. I only learned later that Ankyon is a celebrated Korean painter of the 15th century, and that the drawing is from the collection of the Tenri Library in Japan.
The reason I felt so inspired by the drawing was not simply to do with the subject, Togen Topia. The atmosphere related to Topos. It was less a matter of space and distances, than of a universe that was brought to life by the powerful, rocky mountains.
When the artist saw the scene, an image was immediately burned upon his retina, which never faded. The drawing is a picture of this image.
Sometime later, I began to feel a desire to be inside the scene. I analyzed the drawing on my computer as a way of entering the two-dimensional picture, so that I might experience its internal world in 2 1/2 dimensions – in that extra space between 2- and 3- dimensions. Of course it takes time to fully experience so alien a space.
I wanted to recreate that first inspired experience I had felt in front of the drawing, by a process of subtle metamorphosis. Also, I wanted to reconstitute its image of a universe from a different perspective vector. These are a few of the ideas and images behind my work in the exhibition.
The words “Dreaming Journey” and “Togen Topia” are a suitable expression of the feelings that the drawing evokes in us. They say that there is a devil in the computer. I enjoyed playing the devil’s accomplice.

Katsuhiro Yamaguchi, September 1999

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デジタル技術で見直すアナログクラシック「夢遊桃源図」
山口勝弘

李朝初期を代表する山水画の1つとして画家安堅によって描かれた「夢遊桃源図」は、李王朝四代の世宗大王の第3王子安平大君の夢遊の話を聴いた画家が僅か3日間で描いたといわれている。当時すでに宮廷画家として広く名を知られていた安堅は、数多くの画を描いたが、現在間違いなく安堅作を証明できるのはこの「夢遊桃源図」だけである,何故ならこの作品と共に安平大君の夢遊の話の筋書きが長文の自践となって遺っているからである。また当時文化人としてパトロン的存在だった。
安平大君の書画コレクションのリストを見ても分る通り、唐の王維、宋の郭照、蘇東坡などが含まれているが、李朝の中では安堅の28点のみである。

私がこの作品をコンピュータによって解析すると共に、ここに描かれた桃源郷への道程と岩山の群がりを見て興味をもったのは、第1の点として様々な距障をもって配置された風景からくる遠近感の重なりであった。それはルネッサンス以来の遠近法でもなく、東洋的な遠近画法の重層が自由自在に用いられている点であった。

第2の点は、この画面全体から受ける複雑系への指向、つまり混沌とした宇宙とその中に点在する対象物の構造性に関心を持った。したがって桃源郷そのものの描写よりも、ゆらぎをもった宇宙感に興味をもったのである。

この2つの特徴が示している独自の空間的イメージへ、コンピュータによる動きの時間的イメージを加えることにした。つまり絵画として2次元上に表現されているイメージの各要素が分解され、コンピュータ内にデータ化されたそれらを空間/時間系に再構成しようとしたのである。また、電脳遊戯彫刻と命名したのは、これらの映像化されたスクリーンの前に一部分サンドプラス卜されたガラス板を置いて、複合した実体/非実体のイメージを提示している.つまり映像と実像の両棲類とでも言うべき作品となっている。

この両棲類的性質については50年前に作られていた私の作品ヴィトリーヌについて瀧口修造が鋭く指摘していたものである。

この作品をイメージ化するために天理大学附属図書館にて
「夢遊銚源図」 のレプリカ(京都便利堂製)を閲覧させていただいたことに感謝する。

Special thanks to Hazuki Shibato and Nicholas Wadley for the English translation of the text

主な参考図書
(1) 『安堅・夢遊桃源図』、安輝・李炳漠 著、藝耕産業社
(2) 『韓国絵画史』、安輝 著、藤本幸夫・吉田宏志 訳、吉川弘文館
(3) 『安堅「夢遊桃源図」 について(ー)』「ビブリア」65号、鈴木治、天理大学
(4) 『安堅「夢遊桃源図」 について(二)』「ビブリア」67号、鈴木治、天理大学
(5) 『奇景の図像学』、中野美代子 著、角川春樹事務所

32009

1-「電脳影絵彫刻 I」
ビデオプロジェクター1台、ピデオテープレコーダー1台、ガラス、木
“Computerized Shadow Sculpture I”
One video projector, one video tape recorder, glass, wood,
2500 (h) x 2620 (w) x 900 (d) mm

2-「電脳影絵彫刻 II」
ビデオプロジェクター1台、ビデオテープレコーダー1台
“Computerized Shadow Sculpture II”
One video projector, one video tape recorder
3000 (h) x 2250 (w) mm

3-「影絵遊戯箱 I, II, III, IV, V」
ガラス、合成樹脂、紙、木、蛍光灯

“Shadow Play Box I, II, III, IV, V”
Glass, acrylic plastic, paper, wood, fluorescent light
490 (h) x 524 (w) x 95 (d) mm

製作 :
山口勝弘、CEAM:笠置勇星、岡本知久、櫻井宏哉、大塚馨

Production:
Katsuhiro Yamaguchi, CEAM: Yusei Kasagi, Tomohisa Okamoto, Hiroya Sakurai, Kaoru Otsuka

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ASAHI EVENING NEWS WEEKEND, Sept.30, 1999: “Visions of ‘new values’”